私は漫画が好きだ。大好きだ。日本の漫画は質量ともに世界一だと思う。世界中いろいろな国を歩いて回ったけれど、日本より漫画が凄い国なんて無かった。
「漫画なんてガキの読むものだ」なんて言うヤツは無視していい。現代日本の漫画は多様性に溢れている。
とても子どもには読めない大人向けの漫画がたくさんある。子ども向けであっても大人でも楽しめる漫画がたくさんある。日本の漫画は本当に多種多様なのだ。
そんな漫画について、忘れられない光景が1つある。タイでの話だ。
どこの駅だったかは忘れたがBTS(バンコクの高架鉄道)の駅構内だったと思う。制服を着た学校帰りらしき少年が、電車が来るのを待っていた。
私は反対側のホームから、なんとなくその少年を眺めていた。少年はうつむいて本を読んでいるように見えた。
「何の本を読んでいるのだろう? 学校の教科書かな?」と何気なくその本を見ると『ベルセルク』だった。
その少年は12~13歳くらいだったろうか? まだまだ幼さの残るかわいらしい男の子だった。そんな子が読んでるのが『ベルセルク』。
「やるなあ、少年!」と口笛でも吹きたい気分になった。
しかも後で思い返してみるに、どうもあのベルセルクは13巻だったような気がする…… カバーの絵が13巻っぽかったような……
ベルセルク13巻といえばあの「蝕」の巻だ。ネタバレになってしまうので詳しくは書けないのだが、漫画史に残るレベルの衝撃的な巻。
いやホント「蝕」の場面凄すぎるんですよ。100年後にでも残っていそうなレベルなんですよ。
でもベルセルク、しかも13巻なんてもう完全に大人向けの話だ。絵も話も完璧に大人向け。
エロい意味ではなく大人向け(エロスもあるけど)。子どもには刺激が強すぎる。
あのかわいらしい少年は、ベルセルクの13巻を読んでどんな衝撃を受けただろう。トラウマになってやしないか。
それともアレがきっかけになって、ますます漫画にのめり込んでいたりして。
彼の読んでたベルセルクは、ちゃんと原文の雰囲気残した翻訳になっていたかなあ。変な訳になっていなければいいのだけれど。
ある本を初めて読めるのは一生で一回だけ。いい読書体験になっていたらいいな。
なんてそんなことを、10年以上経った今になっても時々考える。
少年だった彼も今では立派な大人になっているだろう。今でも漫画読んでるかな? 読んでるんじゃないかな。漫画って尋常でなく面白いし。
漫画って本当に良いものですよ。漫画があるっていう1点だけでも日本に生まれてよかったと思う。漫画最高!